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『秩父太織・石塚工房のシルク展』開催中です!

木曜より、「秩父太織(ふとり)石塚工房のシルク展」がスタートしました!

 

「シルク」「絹」という素材の名前を知っていても、
では繭玉からどんな工程を踏んで、どんな風に糸にするか?
一般の方が知るチャンスはなかなかないし、言葉で説明されても理解に苦しむところかもしれません。
今回の展示では、石塚工房の最大の特徴である「糸作り」の部分を、パネルを用いてご紹介しています。

 

根本が1番知りたい!「繭から糸をどうやって引くのか?」
石塚工房の北村さん、和田さんが分かりやすく、教えてくださいました!

 

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使うのは、昔ながらのシンプルな道具たち。

 

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特別なものではなく、どこにでもある家庭用の鍋に、1升枡1杯分(約80~100粒)の繭玉を入れて煮ると、
段々とシルク糸の先端がピヨっと浮き上がってくるのだそう!
それを菜箸ですくい1本の糸にしていきます。

 

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浮き上がってきた糸の始まりは、お蚕さんの繭のつくりはじめ。
少し練習をしてから本番が始まるため、最初の2~3mは不安定でいびつ。

この不安定でいびつな吐きはじめの糸を『きびそ』と言います。
安定した糸になったら、いびつなきびそ部分を取り除きます。
写真は、まさにその『きびそ』を取り除いているところです。

 

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糸が安定したら椅子に座っての作業です。
80度を超える鍋の中に入ったシルクの糸を素手で引いていくため
真ん中には水を入れたボウルを置き、冷却しながら作業します。
右は、『座繰り』と呼ばれる歯車の付いた手動の糸繰機。
ハンドルを手で回すことにより、歯車を通じて糸取枠を回転させる仕組みになっていて
一鍋の繭をいっきに引きあげ、『鼓(つづみ/※中央・白い小さな滑車)』に通すことで
少々の撚りをかけながら、糸取枠に巻いて行くのです。

 

この作業1回(1升枡1杯)で取れるシルク糸は、1100m。
例えば、経糸800本として、長さが2mの1枚のショールを折るために
どれだけ沢山の糸が必要になり、そしてそしてそのためにどれだけの作業が必要になるか・・・。
経糸だけでなく、緯糸にも使いますから、想像を超えます。

 

石塚工房は、撚りをほとんどかけない『無撚糸』を経糸にも使用します。
無撚糸と言っても、一般的には少し撚りはかかっています。
一般的に市販されている糸例として、

経糸用は300~360回/m、緯糸用は80~200回/mの撚りがかかっていますが

それに比べ、石塚工房では経・緯糸ともに15回/m程度。
「撚りが全くなし」に限りなく近い、無撚糸なのです。
この、撚りのない、弱い糸を経糸に使用するのは容易ではありません。
糸を強くし、経糸にも使用できるよう、糊付けを行います。

ここでも、工夫が!一般的には海藻からとれる「ふのり」を使用するところ
石塚工房では、「小麦粉(うどん粉)糊」を使用します。
小麦粉糊を使用すると、糸の芯までしっかりと糊が入り強度が増すのです。

 

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ぎゅぎゅっと糊を揉み込み、余分な糊を落とし、1本1本にさばきます。

 

そしてまた、ここで終わらないのが石塚工房のすごいところ。
座繰り引きした無撚糸と、真綿から手で紡いだ糸、2種類の糸を経糸に使用するのです。
違う種類の糸を使用するということは、違うテンションの糸を操らなければいけない、ということ。
何でも、言葉にしてしまえば簡単なことのように聞こえてしまいますが、実際には経験と技の賜物。
1枚のショールを織るために、はじめから織上がりを見据えた緻密な計算と根気が必要。
改めて頭が下がりました。

 

 

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〇コラボストール

真綿糸のもちもち感、座繰り糸のしなやかさなどの質感の違いを同時に味わえます!

 

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〇リバーシブルストール

柄だけでなく真綿糸と座繰り糸の質感もリバーシブルで楽しめます!

 

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〇蜂の巣ストール

座繰り器を使い引いた糸をそのまま機に掛け、蜂の巣柄のフチにあたる部分にきびそ糸を使い織り上げています。

艶やかで軽く使い込むほどに一層肌に優しく寄り添います。

 

 

江戸時代、養蚕製糸を営む農家が換金できない繭や糸を利用して
野良着をつくりはじめたところに起源を持つ『秩父太織(ふとり)』。
使うごとに艶と滑らかさが増す、石塚工房のショール。
展示を通して、身近に感じて頂けたら幸いです。
土日は、北村さん、和田さんも在店しますので、ぜひいろんな疑問を聞いてみてくださいね!

 

<石塚工房ホームページ> http://www.ishizukakobo.jp/
written by kawata