対談

monova対談 Darjeeling
monova対談「Darjeeling」(ダージリン)は、monovaプロデューサーの杉原広宣が、モノづくりに関わる様々なジャンルの方々へのインタビューを通じて、モノづくりの今を伝えるWEBマガジンです。つくり手、流通に関わるつなぎ手、そしてモノの使い手、皆さんに読んで楽しんでもらえる内容を目指します。この第八回目は、シンガポールデザイン×ジャパンクラフト 展でご紹介するシンガポールのセレクトショップ『スーパーママ』の代表:エドウィン・ロー氏にお話を伺いました。
エドウィン・ロー氏プロフィール
シンガポールの起業家。Supermamaを手掛け、 2011年ラッフルズホテルの向かいにSeah Streetの1号店、 2012年シンガポールアートミュージアム8Qに2号店をオープン。 自身もプロダクトデザイナーとして活動する一方、デザイン学校SODE(http://sode.sg)の講師、 セレクトショップSupermamaの運営を手掛ける等デザインと教育の分野を中心に幅広く活動している。 2012年12月より、日本の優れたものづくり企業と、シンガポールのクリエーターのコラボレーションを積極推進する為にKCmitFと共にプロジェクトをスタートさせた。

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Supermama店内

Supermama店内

杉原:今回は、シンガポールで日本のプロダクトを数多く紹介するショップ、「スーパーママ」の代表エドウィンさんにインタビューをします。シンガポールで展開するきっかけや、その取組み内容、また将来の展望等をお聞きしたいと思います。

 

エドウィン:ようこそ、シンガポールへ。スーパーママはいかがでしたか?

 

杉原:先ほど店内を拝見させていただき、日本でも良く知られる日本製品が多くて驚きました。「スーパーママ」はいつからスタートしたのですか?

 

Supermama店内②

Supermama店内②

エドウィン:2011年3月にオープンしました。私もデザイナーなので、自分でいいなと思うデザインのプロダクトを紹介しています。

 

杉原:エドウィンさんもデザイナーなのですね?

 

エドウィン:そうですね。もともと、シンガポール国立大学でデザインを専攻していました。卒業後には、仲間と一緒にデザインコンサルティングを始めて、マイクロソフト社、コカコーラ社、ナイキ社などの仕事をしていました。現在も、デザイナーとして、またデザインコンサルタントとして、その他にも学生にデザインの指導などを行っています。

 

杉原:デザインの指導も行っているですね。どのような指導をしているのですか?

 

エドウィン:色やカタチの表層に至るまでのユーザー心理をとらえることを考えるように伝えています。ブランディングともマーケティングとも違う、視覚化されていない右脳に響く経験や感性をデザインとして表現するよう教えています。

 

杉原:興味のある話しです。心理に作用するプロセスがデザイン的に解決されたものは私も大好きです。

 

エドウィン:当然、そこには個人の好みや地域性もあると思います。私はマテリアルカルチャーという言葉で表現していますが、その地域の環境や文化・歴史など様々な要因が言葉で表現できない感性を形成します。その感性を私は大事に考えています。例えば、このスーパーママの店内も、音楽や香りや窓から差し込む光などの空間の演出もこだわりました。

 

杉原:このスーパーママの立ち上げの目的は?

 

エドウィン:目的は実はたくさんあるのですが、しいて3つに絞ると、1つ目は、妻のお腹に2人目の子供ができたのをきっかけにして、これまでの人生を振り返って、今後を考えると、今、人生の新しいチャレンジをしなければならないと感じたこと。2つ目は、自分のデザイナーの視点でみる市場リサーチです。良いデザインのものと売れるデザインは違うことが多いのですが、それは何なのか?を知りたいなと。3つ目は、若手のデザイナーが目標を持てるように、私がショップを運営して彼らの活動の場を拡げていこうと考えたことです。

 

杉原:なるほど、私もmonovaの立ち上げには、同様の目的がありました。とても共感します。場を作ることは、意思表示を明確に示すことになりますね。ちなみに、その頃から日本製品が店内に多かったのですか?

 

エドウィン:いや、当初は、台湾、イギリスなどの製品も多くありました。

 

 

 

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杉原:そもそも日本製品を紹介するようになったきっかけは?

 

エドウィン:もう10年ぐらい前にシンガポール政府のデザイン進行プロジェクトの一環で、日本の著名なデザイナーの先生に招かれて日本に2週間滞在し、大阪、京都、東京を案内してもらいました。期間中は、日本の工芸品に触れる機会も多かったのですが、そのときに先生がおっしゃった「古いものを新しく生まれ変わらせることもデザインである。」という言葉に感銘を受けました。その頃の私は、工芸品のようなジャンルではなく、最先端の電化製品のようなこれから産み出されるようなプロダクトばかりを考えていたからです。そうして、その先生の言葉を聞いてから、日本の工芸品にとても興味を持つようになりました。

 

杉原:同じプロダクトでも全く違いますよね。

 

エドウィン:そうなんです。特に私は、モノづくりに対するアプローチに興味がわきました。

 

杉原:アプローチと言うと?

 

エドウィン:職人のモノづくりに対する姿勢ですね。

 

杉原:なるほど。

 

エドウィン:日本製以外にもかっこいいものもあったが、モノづくりが人生そのものといった印象を受けたのは初めてですし、何よりもそこが素晴らしいと思いました。和紙の紙漉職人とも話しをしたことがありますが、人生を捧げているといった誇りを感じました。これがヨーロッパだったらビジネスが先にあるから、そうはならないですね。(笑)なので、日本の工芸品に出会うときは「作り続けているのはなぜか?」「何のために作っているのか?」という問いを常に行っています。

 

杉原:そう感じてもらえると私は職人ではないですが、なんだかとても嬉しいです。その一方で課題はありますか?

 

エドウィン:ビジネスが後にあるから、価格がとても高いですね。(笑)カッコいいし、ストーリーもある、でも、高いからなかなか売れませんでした。でも、大谷さん(#)と2012年に出会ってから、新しい工芸品との出会いもあり、流通も整備されて、価格が下がったお陰で売れるようになってきました。

 

# 大谷さん・・・大谷啓介氏。日本の工芸品をシンガポールに繋ぐコーディネーターとして2012年から活動を始める。2012年にシンガポール・ショッピングモール内での日本の工芸品を紹介するイベントを開催し、それにエドウィン氏が偶然に見つけ、今に繋がる。現在はビジネスパートナーとしてエドウィン氏とともに活動している。

 

杉原:価格だけの要因ですかね?

 

エドウィン:スタッフの経験もあると思います。コミュニケーションやストーリーを伝えることを徹底していますし、それでスーパーママのファンになってくれた顧客との信頼も築けてきた。

 

 

 

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キハラの有田焼

キハラの有田焼

杉原:特に評価の高いものはありますか?

 

エドウィン:有田焼のキハラさんの皿は、美しい柄で贈り物に購入していく方が多いです。店頭に並べた当初から、売れていきました。

 

杉原:その後、今のような日本のメーカーとシンガポールのデザイナーとのコラボレーションが始まるのですね?

 

エドウィン:そうです。シンガポールの展開に期待をしてもらえたことが大きかったですが、すぐにシンガポールのデザイナーとのコラボレーションが生まれ、とてもクレイジーなスケジュールだったのですが、3ヶ月後のシンガポールでのデザイナーズウィークで発表しました。

 

杉原:エドウィンさんのデザインではないのですね?

 

エドウィン:デザインをしたいなと強く思いましたが、グッとこらえました。(笑)私だけの個人的なお付き合いではなく、国際交流の一環で取り組むほどの意義深いものだと感じていましたので、私のネットワークの若手デザイナーにシンガポールのデザインをするように依頼し、キハラさんに提案しました。

 

杉原:最初に採用されたのは、集合住宅の窓をモチーフにしたデザインですね。

 

エドウィン:これがシンガポール?と意外に思われるかも知れませんね。(笑)でも、シンガポールは国土も狭いですし、集合住宅に住むのが一般的です。だから、シンガポールの人が、この柄を見るととても親近感を覚えます。マーライオンだけではないんですよ。(笑)

 

杉原:そうか、マーライオンではないのですね?

 

エドウィン:デザインを依頼する際に、この取組みの最初として発表するには、マーライオンのような架空のキャラクターをアイコンとして使うのを避け、リアルなシンガポールを映し出すように条件を出しました。

 

杉原:それはなぜですか?

 

エドウィン:やはりシンガポールのリアルなストーリーを柄として表現したほうがいいなと思ったからです。

 

杉原:とても面白いですね。共感します。販売も好調のようですね?

 

エドウィン:それまでの日本の柄も売れていましたが、それ以上にシンガポールの柄のものはとても売れています。この取組みは、シンガポールのデザイン賞を受賞したことも重なって、国内の他のショップでも取り扱ってもらうようになりました。

 

 

 

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杉原:現地のデザイナーとの取組みの成果ですね。

 

エドウィン:本当は秘密にしたいところですが(笑)、製品にはファミリアポイントが如何に多いかが重要です。このキハラの皿にはそれがあります。

 

杉原:ファミリアポイント。興味深い言葉ですね。秘密にしたいところすいませんが(笑)、もう少し具体的に教えてもらえますか?

 

エドウィン:この有田焼の製品には、「日本製」「伝統的」「美しい柄」といったポイントがすでに価値としてありましたが、そこに「シンガポールの風景」「シンガポールのデザイナーによる」というポイントが加わり、購買行動に繋がったということです。

 

杉原:なるほど。購買者との共通点、共感、親近感、う〜ん、やっぱりファミリアポイントとそのままの言葉がしっくり来ますね。この言葉は、どの商品開発にも当てはまる重要なポイントだと思います。

 

杉原:日本は海外展開を目指す企業も少なくありません。イタリア、フランス、ドイツ、ニューヨークなどで開催される見本市には、必ず日本の企業が出展しています。アジアもそうですし、当然シンガポールも進出を目指す企業も必ず増えてくるでしょう。

 

エドウィン:そうですね。このような取組みをしたいという企業のオファーも来ています。

 

杉原:今後も楽しみですね。では、そのときに注意しなければならないポイントのようなものはありますか?

 

エドウィン:コンセプトとコンテクスト、その2つが大事です。特に『なぜそれを作るのか?』といったコンテクストを組み立てておくことは求められるでしょう。例えば、日本酒を飲むための器がありますが、シンガポールでは日本酒を飲む人は当然、少ないから売れません。当たり前のようですが、地域のライフスタイルに適合させることが重要ですね。

 

 

 

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杉原:ありがとうございます。もっと話しを深めていきたいところですが、夜8時から始まってもう11時を過ぎてしまいました。(笑)そろそろ最後の質問に入ります。今後のエドウィンさんの目標をお聞かせください。

 

エドウィン:目標としては、現在デザイナー、デザインコンサルティングなどをしていますが、シンガポールをベースにしながら、デザインで多くの人の人生を豊かにするために活動していきたいと思います。実は今、日本との取組みが製品を媒介にして伝わり、オーストラリアからも同様の開発の依頼が来ています。オーストラリア、シンガポール、日本とが一つの製品を通して繋がっていく訳ですが、こうしたストーリーを大事に今後も展開したいですね。

 

杉原:オーストラリアとの取組みもどのような製品になるのか楽しみです。これからもますます拡がっていきそうですね。先日、エドウィンさんにはmonovaにも来ていただきましたが、まだまだ日本には優れたモノづくりが多いですから、いつかエドウィン流に活かしてもらえればと期待したいと思います。ちょうど0時になりました。今日は、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

▼スーパーママホームページ

http://www.supermama.sg

 

< インタビュアー 杉原 広宣 プロフィール >
1972年埼玉県生まれ。2001年より日本のモノづくりに関わるようになり、
これまで手掛けた製品開発、展示会企画などのプロジェクトは、有田焼、山中漆器、今治タオル、越前和紙など。
2011年にmonovaをオープン。各地域のモノづくりに貢献するべく今日も奮闘中。